連作障害



家庭菜園 連作障害 連作障害とは「連作」つまり同じ野菜を同じ場所で続けて作ることにより発生する生育障害のことです。具体的には根が傷んで生育状況が悪くなったり、土壌感染の病気が猛威をふるったりします。この連作障害は野菜を育てる期間を何年か空けることにより防ぐことが出来ますが、野菜によっては5年以上も間を空けなければならない野菜もあれば逆に連作障害をおこさない野菜もあります。限られたスペースで行う家庭菜園の場合、各野菜が障害をおこさないように畑を効率よく使用する作付けプランを考えなければなりません。
 本ページでは連作障害に関する基本的な事項をご紹介していきます。作付けプランを考えるのはあくまでも家庭菜園を行う皆さんです。連作障害に関する知識を身につけ効率のよい作付けプランを考えてみて下さい。
 なお連作障害については紀元前の頃から認識されており、一度発生すると回復困難なことから日本でも忌地(いやぢ)として恐れられてきました。現在は薬剤の使用などによりある程度の現状回復は可能ですが、厄介な事案に変わりはないので連作障害については十分に注意して菜園計画を考えて下さい。


連作障害の原因


 連作障害の主な原因としては3つほど考えられていますが、どれも単独では説明がつかない場合が多く、様々な原因が複合して連作障害が発生していると考えられています。



特定成分のアンバランス化

 野菜は成長する際に、それぞれ必要とする土中の成分の量が異なります。同じ野菜を作り続けていると大量に必要とする成分は不足し、さほど必要としない成分は過剰となり結果生育障害を引き起こすと考えられています。



病原菌の増加

 連作障害の原因のうちもっとも厄介とされているものです。
 野菜というのはある程度病害虫に対する抵抗力をもっているので、病害虫の方も自分たちが寄生したり餌とする野菜は限られてきます。根こぶ病がアブラナ科の野菜に、モザイク病がウリ科の野菜を中心に発生するのはこの為です。この為同じ野菜を作り続けているとその野菜を養分とする病害虫が繁殖し密度も増し、やがて大きな被害が発生してしまうのです。害虫や病原菌は異なる野菜では繁殖しにくいので野菜の種類を毎年変えることで害虫や病原菌の増加を抑えることができ、場合によっては減らすことが可能となります。ただし連作障害を引き起こすほど害虫や病原菌が増加してしまった場合は薬を用いた土壌消毒が必要となってきます。



自家中毒

 植物のなかには自分の根から他の植物の成長を抑制する物質を放出するものがありますが、この物質の濃度が高まることにより自らも自家中毒をおこし生育障害を引き起こすというもの。



 以上の3つが連作障害における主な原因と考えられています。なお毎年同じ田んぼに植えている稲は元々イネ科の野菜は連作障害を起こしにくいうえに、冠水することにより病原菌が窒息し増加が抑えられ、中毒物質も流されてしまうことから連作障害を起こさないと推測されています。



連作障害の野菜一覧


 ここまでで連作障害の原因や恐ろしさは理解できたと思います。それでは今度は連作障害のない野菜や輪作の期間について具体的にご紹介していきます。


連作障害のない野菜

※「連作障害のない野菜」と明記しておりますが、実際には「連作障害の出にくい野菜」という表現の方が正しく、過去には連作障害らしき現象が確認されたという事例も報告されています。しかし筆者個人的にはきちんとした土作りを行っていれば連作障害が出ることはほとんどないのではと思っています。
 なおこれらの野菜は無理に連作する必要はなく、輪作のローテションに組み入れれば他の野菜の連作障害防止にもなりますので是非取り入れてみて下さい。また行政が貸し出している市民農園等の畑で前年度どのような野菜が育てられていたか分からない時などは本項で紹介している「連作障害のない野菜」を選ぶと安心です。

カボチャ玉ねぎネギニンジン大根サツマイモニンニクミョウガ大葉・紫蘇とうもろこし


1年以上休んだ方がよい野菜

インゲン、カブ、キャベツほうれん草、春菊、京菜、ミツバ


2年以上休んだ方がよい野菜

キュウリ、イチゴ、ジャガイモ白菜、レタス、ニガウリ


3〜4年以上休んだ方がよい野菜

トマトナスピーマン、トウガラシ、メロン、落花生カリフラワー


4〜5年以上休んだ方がよい野菜

スイカ、エンドウソラマメ里芋ゴボウ生姜



連作は野菜科で考える

 さて大体イメージはつかめてきたでしょうか、ここでもう一つ大切なポイントがあります。それは連作障害の基本は同じ野菜もさることながら重要なのは「同じ科」の野菜を連作しないというところにあります。
 例えばトマト、ナス、ピーマン、トウガラシ、ジャガイモで輪作したとします。4年おきのローテーションとなっていますので大丈夫のようにみえますが、実は上記の野菜はみな「ナス科」の野菜。
 種類は異なれど全てナス科ですから連作障害が発生する確率は非常に高くなります。


主な野菜科の分類
主な野菜科の分類


輪作・ローテーション


 輪作のローテーションはその人によって様々です。逆にいえばその人の個性がでるもので、端から見てると関心させられるような個人菜園もよく見かけます。
 さて前述のようにトマト、ナス、ピーマン、トウガラシ、ジャガイモといったナス科の野菜を育てたい場合、1シーズンにまとめてナス科の野菜を育て、3〜4年経過後に再び植える方法もあれば、ナス科の野菜を植える区画を決めその区画をローテーションさせながら、区画内でも年ごとに異なったナス科の野菜を植えていく方法もあります。ただし前者の場合同じ科の野菜を全面に植えると病害虫も発生しやすいですし、発生した場合大きな被害を被ることもあります。後者の場合はナス科の野菜は1種類しか栽培できませんが病害虫が発生しても被害は一区画に抑えられますし、なにより1シーズンで多くの他の科の種類の野菜を育てることができるので一般的です。
 この輪作・ローテーションの考え方は別途「菜園計画」のページで詳細を紹介していますので、参考にしてみて下さい。

家庭菜園 作付け表

※上記の菜園計画図はトマトとナスを隔年毎に植え代えながらローテーションしています。こうする事によりナス科の野菜の連作は防ぐ事ができます。


連作障害防止剤・薬・土壌消毒


 連作障害を抑えるためには同じ科の野菜を連作しないことが基本ですが、他にも生物や薬などの働きにより予防することができます。野菜栽培のプロである農家の方々のなかにはこれらを利用し上手く連作障害を抑え毎年良質で同じ野菜を生産している場合もあります。家庭菜園の現場でも行える連作障害防止策としては「天地返し」を行う、「接ぎ木苗」を購入して植える、ネギ類を輪作の野菜に加えるなどの他に連作障害防止剤や薬剤による土壌消毒などがあります。



接ぎ木苗を植える

 接ぎ木苗とは病害虫に強い植物を台木として、目的の野菜を接ぎ木したもの。具体的にはキュウリやスイカの台木には病害虫や連作障害に強く同じウリ科のカボチャを使用したりします。
 ただし連作障害をおこしにくいとはいえ同じ科の植物同士を接ぎ木しているわけですから油断は禁物です。
 接ぎ木苗は一般の環境では作るのは難しいので種苗店などで購入することとなります。


ネギ類を植える

 ネギ類の野菜は連作障害をおこしにくいばかりか、地中の病害虫の活動を抑制する効果をもっています。この為、ネギやニンニク、ニラといったネギ類の野菜を輪作のローテーションに組み込む事により連作障害をおこしにくくする効果が期待できます(薬剤消毒のような絶対的効果は期待できません)。



連作障害防止剤

 連作障害防止剤といっても色々あるのですが、近年人気が急上昇してきたのが微生物由来の連作障害防止剤です。簡単に言えば微生物の活動を活発化させ土の状態を野菜栽培に適した状態にもっていくもので、その過程で病原菌の活動も抑制されるとされています。堆肥をはじめとした有機質肥料には連作障害の防止効果があるとされていますが、これを応用したもので連作障害防止剤というよりは土壌改良材のようなものと認識しています。「連作障害ブロック」や「菌の黒汁」といった商品が販売されています。


 石灰窒素や専用の土壌消毒剤を用い地中の病原菌を殺菌してしまう方法。害虫の卵や雑草の種子も駆除することができますが、地中の有益な生物も殺してしまいますし、使用方法をまもれば安全とはいいながらもやはり化学物質ですので嫌厭する人も多いです。筆者も個人的には家庭菜園の現場では連作障害防止の為に使用するのではなく、連作障害が発生してしまった場合の畑を復活させる最終手段として使用する程度に抑えておいた方がよいのかなとは思っています。