さつまいも
さつまいもはメキシコ、中央アメリカ辺りが原産とされるイモで、日本には沖縄を経由して鹿児島地方に広まりその後全国に広まりました。
さつまいもは高温や乾燥に強く、ビタミンCや食物繊維の他、カロチン、カルシュウム等も含んだ健康野菜です。他の野菜と比べて気象の変化や土質を問わずに生育可能で、雑草や病害虫に強く、生育・成熟が早く、米や小麦といった主食作物と同等のエネルギー量を持っていることから昔は救荒食物(飢饉や災害、戦争に備えて備蓄、利用される代用食物)としても栽培されたこともある野菜の優等生です。
さつまいも栽培の特徴・コツ
・窒素肥料は一般野菜に比べて少ない方が収穫量、甘みともに増します。
・水はけが良く、日当たりも良い砂質土の畑を好みます。
・
連作障害が無く、連作・輪作をすると逆に形、甘みのよいイモが収穫できます。
・株間は30〜40p間隔とする
・日当たりの良い事が絶対条件で、日当たりが悪いと繊維質の痩せたイモとなります。
さつまいもの栽培カレンダー
さつまいもの栽培におけるおおまかな栽培暦(カレンダー)は上記の通りとなります。あくまでも標準的な時期を示していますので、実際には皆さんが住んでいる地域の気候や栽培する品種により時期は多少前後します。おおまかな目安として
発芽、発根に必要な温度は15度以上で生育適温は22〜30度。15度以下では休眠状態となり10度以下で低温障害を受けます。
土づくり
畝幅は70センチとし肥料(元肥)は
堆肥と
草木灰をはじめとしたカリウム分を大目に、窒素分は少なめに施肥します。前の年に野菜を栽培して肥料分が多く残っている畑の場合は肥料は施さなくても大丈夫です。
さつまいもは過湿に弱いので畝の高さは30センチのカマボコ型にし乾燥防止や地温確保の為に
ポリマルチをすると効果的です。
さつまいもは種イモではなく苗から育てるのが一般的です。もちろん種イモからも発芽はしますが、手間暇やコスト面を考慮すると家庭菜園の現場では苗を購入して育てる方がよいでしょう。
苗は植え付けの前日から一晩水につけて吸水させたうえで、株間30〜40センチで一本ずつ5〜6センチの深さに斜めに差し込むように植えます。また植える時期が遅れ栽培期間が短い場合などは、苗を垂直に植えると収穫できるイモの数は少なくなりますが早く収穫する事ができます。この他苗を水平に植えるとイモの形は小さいですが沢山のイモを収穫する事ができます。
種芋から育てる場合
さつまいもは種イモではなく苗から育てるのが一般的と前述しましたが、では種芋から育ててみたい場合はどうしたらよいのでしょうか?参考までに本項でご紹介しましょう。
さつまいもは一般のスーパーなどで販売されているさつまいもから発芽させることができます。
気温が20度を超すようになったらさつまいもを植えます。このとき事前に48℃のお湯に40分ほどひたしておくと、芽の出がよくなります。
芽がでたら後の育て方は一緒です。放っておいても成長してやがて収穫できるようになります。
さてここでもう一つ別の楽しみ方があります。それは種イモから自分で苗を採取して畑に植えて育てるというもの。具体的には種イモから発芽して葉が7〜8枚ほどに成長した茎を葉が2枚ほど残して切断し、別の場所に植えると根を生やし元気に成長していきます。この時切り取った茎は日の当たらないところに3〜4日おいて、不定根(ふていこん)が少しのびかけたものを植えると活着が良くなります。種イモに残った茎からは、また新たに葉が生え始めるので、再び苗を採取することができます。このようにさつまいもは一つの種芋からいくつもの苗を採取できるので、興味があったら一度試してみてください。
下の写真はスーパーで売っていたサツマイモを発芽させたものです(注:茎を採取しやすいように種イモの一部を土から出しています)。伸びてきた茎を切断して畑に植えることにより複数の株を育てる事ができます。また茎の採取は種芋の体力・寿命がつきるまで可能ですが、さつまいもの生育に適した期間というのは限られていますので、ある一定の時期がすぎたら種芋はそのまま畑に植え直してやると良いでしょう。
中耕・土寄せ・追肥
苗を植えてから1ヶ月ほど経過したら除草を兼ねて畝と畝の間を軽く耕し土寄せを行います。この中耕と土寄せは約1ヶ月間隔で行い、こうすることにより雑草の繁茂を押さえるとともに土の中に空気が入りイモの生育が良くなります。なお追肥は畝間にカリウム分を主体とした肥料を施しますが、苗が元気に育っている場合は特に肥料を施さなくても大丈夫です。なおポリマルチを施している場合は気温が上昇してきた時点で取り外しておきます。ポリマルチを施したままですと地温が高くなりすぎたり、通気性が損なわれイモが肥大しません。
気温の上昇とともに葉が生い茂ってきますが、これがわざわいして逆にさつまいもの生育に支障となる場合があります。葉が茂りすぎてきたなと感じたらツルを引っ張りひっくり返すようにし節間の根を地面から浮かせます。つる返しによりイモが無節操に形成されるのを防ぎ、良質なイモを収穫することができます。
下の写真は極端な例ですが、上がつる返しを行わなかったさつまいもで下が適切につる返しを行ったさつまいもです。上のさつまいもは無造作につるが伸び前後左右の畝にまで伸びていわゆる「つるぼけ」の状態であるのに対して下のさつまいもはきちんと畝内に収まっています。収穫も上は小粒で痩せたイモが多数採れる傾向にあるのに対し下は大きなイモが採れます。
収穫
収穫は10月頃から可能で初霜が降りる頃までに終わらすようにします。収穫時期が近づいてきたらまず最初に試し掘りを行いイモの生育具合を確認するようにしましょう。収穫方法はまず地上部を刈り取りつるをたぐるようにしてイモを掘り上げます。事前に周囲をスコップで掘っておくと取りこぼしが少なくなります。収穫したイモは半日ほど天日にさらすと甘みが増します。ちなみに収穫は遅ければ遅いほど甘みが増し、初霜が降りる直前、ギリギリに収穫したものは甘み、品質ともに一番良いといわれています。
プランターでの栽培
さつまいもは根菜なのでプランターなどで栽培する場合、最低でも30センチ以上の深さがないと栽培は難しいです。大きめのプランターや鉢を用意できるようでしたら栽培は可能ですが、地植えに比べると収穫量や大きさは若干劣る傾向にあります。
さつまいも栽培の失敗例
病害虫
さつまいもは病害虫に強い野菜です。他の根菜と比べるとイモムシ等の食害があってもイモ自体への影響はあまりありませんが、イモムシの発生密度が高いようでしたら、大きくなる前に薬剤を散布するようにしましょう。またコガネムシの幼虫は地中でイモを食害しますが、こちらも深刻な被害となる事は希です。もし気になるようでしたら薬剤を散布しておきましょう。
イモが痩せている
さつまいもの失敗例で一番多いのが「イモが太らない」こと。原因としてはいくつか考えられるのですが、まず疑われるのが「肥料分(特に窒素分)が多いこと」。窒素分が多いと葉茎ばかりが生い茂りイモが肥大しない「
つるぼけ」と呼ばれる状態となります(上段の「
つる返し」の項を参照)。この他土が乾燥していて通気性が悪かったり、前述してありますがポリマルチをしたことにより地温が上がりすぎてしまうこと等も原因としてあげられます。
病気
サツマイモは比較的病害虫には強く無農薬でも十分育ちますが、サツマイモが罹りやすい病気としては
斑点モザイク病、
立枯病、
黒あざ病、
つる割病等があり、発生しやすい害虫は
コガネムシ、
ハスモンヨトウ、
エビガラスズメ、
ヒルガオハモグリガ、
ジャガイモガなどがありますが、多少のイモムシ類が付いていても元気に育ってくれます(ただし他野菜への移動も考えられるのでイモムシ類を見つけたら駆除は怠らずに)。
鳥害
サツマイモはお盆を過ぎたあたりからイモが大きくなってきますが、この過程でイモが地面から出てきてしまうことがあります。するとそれを目敏くカラスが見つけて食害にあってしまいます。一般的に
苗を水平に植えた時はイモが地表面に出やすく、
垂直に植えた時は出てきにくい傾向にありますが、お盆を過ぎたあたりに根元をチェックしてみて、赤紫色の子イモが地表面に見えていたら土寄せをしてイモが見えないようにしておきましょう。