いちご
プランターや鉢植えでの栽培が容易で昔から家庭菜園の定番として人気のある果物であるイチゴ。イチゴはアメリカが原産地とされるバラ科の果実類です。オランダイチゴの呼び名でもよく知られていますが、これはオランダで品種改良され広まっていったことに由来します。
果実類ですが、私たちが普段食べているのは
花托(「かたく」花弁やおしべ、めしべ等を支えている花の根元の部分)の部分で厳密な意味での果肉は花托の表面にある粒々の部分。そして種にあたる部分はその小さな粒々の中にあります。
一般的なイチゴの栽培は毎年9月頃から出回る苗を入手し(寒冷地では4月頃に「花付き苗」が出回る所もあります)、植え付け翌年の春から初夏にかけて収穫します。一度植え付けると翌年からランナー(小苗)が伸びてくるので、それを利用して毎年苗を更新しながら育てていくことができます。
イチゴの栽培・育て方のコツ
・
連作障害(1〜2年)があります。株は毎年更新するのが基本ですが、同じ場所での栽培は控えるようにしましょう。
・pH5.5〜6.5の弱酸性の土を好みます。
・毎年新しいランナー(小苗)を出させ株を更新するのがよい実を収穫するコツです。
・窒素肥料は控えめにしましょう。
・マルチングや敷き藁などで土の乾燥を抑えるとともに、果実が土に触れないようにしましょう。
・株間は30p程度とします。
イチゴの年間スケジュール・栽培カレンダー
イチゴにおけるおおまかな年間スケジュール・栽培カレンダーは上記の通りとなります。あくまでも標準的な時期を示していますので、実際には皆さんが住んでいる地域の気候や栽培する品種により栽培期間は多少前後します。
おおまかな目安として
生育適温は18〜25度で日中の気温が20度を超し長日が進むと果実が肥大していきます。また気温が25度以上になると成長は鈍化します。
小苗づくり
6月も後半になると株からランナー(小苗)がいくつも伸びてきます。大体一つの株から3〜4株の子苗ができます。小苗の本葉が3〜4枚ほどになったら、親株側のランナーを2pほど残して残して切断し、小苗を育てます。なお小苗は親株の病気を引き継いでいる場合もあるので、病気が心配な場合は小苗からさらにランナーが伸びてできた孫苗を育てると安心です。
またプランターで育てている場合はランナーをポットに誘導し、植え付け時までポットで育てるとよいでしょう。
小苗の仮植え
小苗は暑さに弱いので別途仮の畝に仮植えしておくと安心です。仮畝は堆肥を中心に施しておき、小苗を植えた後は、寒冷紗などで真夏の直射日光から小苗を守るようにします。
土作り
イチゴの
土作りは最低でも小苗の植え付け2週間程前には終わらせておくようにします。あらかじめ苦土石灰をまいて耕しておいた畝に元肥として一株あたり堆肥・鶏糞・腐葉土を一握りずつ施し、よく耕した後に畝幅1mほどに平らにならしておきます。イチゴの栽培は半年以上の長い期間になるので堆肥を十分に施ししっかりとした土作りを行うことが成功の秘訣です。
小苗の植え付けは土作りが済み、夏の暑さも一段落した10月の中旬から下旬にかけて行います。この頃になると小苗も本葉が6〜7枚ほどに成長していると思います。
イチゴには株の根元に王冠のようなクラウンと呼ばれる「芽」があります。イチゴはこのクラウンから新たな芽が出てくるので、植え付け時はこのクラウンが土に埋まってしまわないように注意しましょう。クラウンが埋まってしまうと最悪の場合株が枯れてしまうこともあります。
植え付け後、2〜3週間ほど経過したら少量の化成肥料を施しておきます。
秋になり日が短く平均気温も25℃付近まで下がるとイチゴは
花芽分化を始めます。このときできる花芽が来年花を咲かせるので、植え付けから冬越までの間にいかに多くの花芽を分化させることができるかが、来年の収穫を左右することとなります。
冬越し
低温・短日が進むとイチゴは休眠状態になり株が小さくなってきます。
こうなってくるといよいよ冬越しの準備となります。冬越しの仕方は株が乾燥しないように敷き藁やポリマルチなどでぴっちりと養生し、化成肥料を月に1〜2回施し肥効が落ちないようにします。この冬越しの時期に株が乾燥してしまうと大きなダメージを受け春の収穫に影響の出る場合があります。また寒風を避ける為に北側によしずやビニールを張ったり、場合によってはビニールトンネルをかけて苗を養生します。
この他、植物は葉を枯らす場合にもエネルギーを消費するので、枯れ葉は早め早めに取り除くようにしましょう。
開花・収穫
無事冬越しし気温が暖かくなってくると1株につき3〜4本ほどの花茎が伸び、花が花茎1本につき3〜4個ほど付きます。このときランナー(子株)も出始めますが、この時点では花や実に栄養が行くようにランナーは切り取ります。
開花から30〜40日ほどで実が完熟して収穫となります。収穫は晴れた日の朝に行うようにし、雨期になると実が傷みやすくなるのでビニールトンネルなどで雨よけをつくるとよいでしょう。
また果実が土に触れると傷んでしまいやすいので敷き藁やポリマルチなどで果実が直接地面に触れないようにしましょう。
イチゴはいつ植えたらいいの?
イチゴの苗の植え付けは夏の暑さも一段落した10月の中旬から下旬にかけて。
イチゴの収穫が終わりランナーから芽が出た小苗を新たな畝に植えて冬を越します(親株は原則として処分します)。
また夏の暑さから小苗を守る為に夏の時期に仮植えする場合もあります。
なお、小苗は秋に販売されるのが一般的ですが、寒冷地などでは春先に花付き苗が販売される事があります。
イチゴの肥料は何をやったらいいか?
イチゴの栽培期間は半年以上と長いので元肥は堆肥や腐葉土、鶏糞といった有機肥料を中心にしっかりと施し、追肥は肥切れしないように少量の化成肥料をこまめに施します。また追肥は窒素肥料は控えめにして速効性のものを使用するようにしましょう。
一株で何個取れる?
イチゴは1株につき3〜4本ほどの花茎が伸び、この花茎1本につき3〜4個ほど花が咲きます。実は花の数だけ成りますので、目安として1株最大で16個ほど少なくとも9個ほど収穫できれば合格点といえるでしょう。
なお一般的に春先に販売される「花付きの苗」はあまり良い実が成らない傾向にあるようです。花付きの苗はランナーから出た小苗を手塩にかけて育てると翌年には充実した収穫がたくさん収穫できるようになります。
プランターでの育て方
イチゴは標準タイプのプランターで育てる事ができます。乾燥に弱いので水やりはしっかりと行いましょう。またいちご栽培専用のおしゃれな鉢も販売されているので、そちらを利用してみるのも一案です。
イチゴの栽培失敗 例
イチゴは育てやすく、比較的病害虫に強い果物です。乾燥に注意し枯れ葉などはこまめに取り除き風通しをよくするように日頃から心がけておけば、さほど心配するような事はないと思いますが、以下にイチゴの栽培における主な失敗例や注意点をご紹介しておきます。
病害虫
収穫期に実が腐る「灰色カビ病」は事前の薬剤散布で、根から感染して株を枯らしてしまう「萎黄病」は小苗のときから気をつけ発病を確認したら感染が広がらないように直ちに除去するほかありません。
実を食害するナメクジや蟻類は誘引剤を使用して駆除しますが、プランターや鉢植えにして地面から物理的に遮断してしまうのも効果的な方法です。
またアブラムシ・ハダニ類は薬剤散布で防除しますが、前年発生した場合翌年も高い確率で発生する傾向にあるのでアブラムシ・ハダニ類が発生した翌年は事前に予防散布しておくのも一案です。
花が咲かない
前述してあるとおり、イチゴの実の数は
前年の秋に分化する花芽の数で決まりますから、この時期は肥料切れを起こさないように、なおかつやり過ぎないように少量の化成肥料をこまめに施します。
また小苗を秋遅くに植えると、苗の生長は低温の影響で定植後すぐに止まり、花芽の数が少なくなります。また定植が早すぎたり、多肥で栄養生長にかたよると花芽分化が遅くなり花数が減る傾向にあります。