ヨトウムシ
ヨトウムシはアブラナ科の野菜を中心にほとんどの野菜を食害するヨトウガと呼ばれる蛾の種類の幼虫です。その旺盛な食欲から大切な野菜をたちまち穴だらけにしてしまう憎き相手ですが、大きくなると農薬が効きにくいうえに、昼間は地中に潜んでいる為なかなか見つけにくいという特徴があります。種類は大きく分けてヨトウガ、シロイチモジヨトウ、ハスモンヨトウの3種類ほど存在しますが、ほとんどの地域でこれらをひとまとめに「ヨトウムシ」と呼んでいます。
本ページではこの家庭菜園の現場で最も嫌われている害虫のひとつ、ヨトウムシについてその生態、対策、駆除方法を順にご説明していきます。
ヨトウムシの生態
ヨトウムシが発生するのは春と秋。ほぼ全ての野菜に発生しますが、特に大根、キャベツ、白菜といったアブラナ科の野菜が大好物です。地中でサナギの状態で夏、冬を越したヨトウガはやがて成虫となり春先と初秋に
葉の裏側に大量の卵を産み付けます。卵から孵化した幼虫は集団の状態で葉を食べ荒らします。このとき葉の裏側から表皮を残した状態で食べるのも特徴の1つとなっています。
幼虫は成長すると昼間は地中に潜み、夜になると活動するようになります。そしてサナギとなり地中で夏や冬を越し命をつないで行くのです。
ヨトウムシの駆除・対策
ヨトウムシの場合、葉が変色したら要注意で、何気なく葉の裏側を見てみると幼虫集団を見つけることがよくあります。この段階で葉ごと除去してしまうのが最も効果的な駆除・対策方法です。
成長して昼間地中に潜むようになると食害の跡を見つけても姿を確認出来ないばかりか、農薬も効きにくくなります。ヨトウムシが地中に潜む時期になると活動を開始する夜中に駆除するか、昼間に株元周辺の地中を割り箸等でほじくり見つけて駆除するのが一番効果のある方法となります。また大量の水を地面に注ぐと地中に潜んでいたヨトウムシは呼吸ができなくなり地中に這い出てきます。この水攻めはプランターなど水の逃げ道がない環境で効果を発揮します。
米糠トラップ
ヨトウムシは米糠が好物で米糠を容器に入れ地面に埋めておくと、夜に集まってきます。しかも好物であるはずの米糠をヨトウムシは上手に消化出来ない為、食中毒をおこして死んでしまいます。
以上がよく言われているヨトウムシ駆除・対策の「米糠トラップ」です。
筆者はシーチキンの空き缶に米糠をいれトラップを仕掛けた事が何度もありますが、確かに夜にチェックするとヨトウムシがいる場合もありますし、米糠に埋もれて丸くなって死んでいる個体もよく見かけます。ただし米糠に引き寄せられるのはヨトウムシだけでありません。ナメクジや小バエ、小鳥といった家庭菜園の現場では歓迎されない方々も集まり、場合によっては住み着き繁殖してしまうこともあるので米糠の管理には十分な注意が必要です。また米糠を含んだ籾殻を野菜の根元を覆うように蒔いておくのも効果があるといわれています。
畑を耕す
前述してあるとおりヨトウムシは夏と冬は地中でサナギとなって暑さ寒さをしのいでおり、前シーズンにヨトウムシの被害を受けた畑を掘り起こすとボロボロと無数のサナギが出てくることがあります。ですからこのタイミングで畑を耕し(掘り起こす)サナギを駆除してしまうと次シーズンの繁殖を抑えることができます。ヨトウムシのサナギは濃いワイン色で長さは2〜3pほど。目立つので出てきたらすぐに分かります。
殺虫剤・農薬
本項ではヨトウムシに効果のある農薬・殺虫剤についてご紹介していきます。
なおご紹介している農薬は
緑線のものが一般的な化成農薬。
水色線のものが天然成分由来の安全な農薬で有機農業にも使用可能なもの、もしくは一般家庭でも使用されている素材となっています。
オルトラン
代表的な農薬のひとつ。用途別に粒状、乳液タイプがありヨトウムシ以外にもコガネムシ、ネキリムシ、アブラムシと幅広い害虫駆除が可能です。
マラソン乳剤
野菜から家庭園芸の草花まで広く使用されている殺虫剤。オルトランに比べると効果のある害虫の範囲が若干少なめですが、それでも効果・信頼性は抜群です。主成分はマラソン。
スミチオン乳剤
オルトラン同様ほぼ全ての病害虫駆除が期待できる殺虫剤。家庭園芸における代表的な殺虫剤ですが、アブラナ科の植物への使用は不可となっていますので、アブラナ科の野菜が大好物のヨトウムシとは少々相性が悪いです。主成分はMEP。
STゼンターリ顆粒水和剤
微生物が生成した芽胞が主成分の殺虫剤。チョウ目の幼虫が食すと病原性のある結晶性タンパク質が産生され殺虫効果を発揮します。チョウや蛾の幼虫以外の害虫駆除効果は無く、効果を発揮するには水和剤が付着した茎葉を幼虫が食べる必要があります。筆者が実際に試してみたところ長さ1.5p程度の芋虫の場合、葉を食べてから3時間ほどで動かなくなりました。小さい個体に対しては強力な効果がありますが大きくなってしまった個体には効きにくく、早期の使用が推奨されます。また収穫を控え化成農薬が使用出来ないときなどにもよく使用されています。