家庭菜園におけるナメクジ対策について



ナメクジ 家庭菜園や園芸の現場で新芽や果実、つぼみなどに食害を与えるナメクジ。庭に限らず家の中や時には2階のベランダに置いてあったプランターに発生したりと、その神出鬼没な様はまさに畑の忍者と呼ぶにふさわしい生き物です。
 ナメクジ自体は自然界のなかでは分解者としての役割を持っているのですが、前述してあるとおり新芽や果実が大好物なので食い荒らしてしまい家庭菜園の現場では致命的な被害を被ることがあります。
 本ページではこのナメクジについて生態、予防、駆除の観点からご説明していきます。


ナメクジの生態


 ナメクジは夜行性の生き物で移動速度は1分間に5センチほど、一晩(一日)の移動距離は3mほどと推測されています。寒さには比較的強い方ですが、活発に活動する時期は春と秋で気温が20度前後の頃が最も活発になります。家庭菜園ではちょうど作物が芽吹いた頃や収穫を控えた頃と重なり。発芽したばかりの新芽が食害にあい枯れてしまったり、ナスなど収穫を控えた実が食べられてしまうといった被害が発生します。
 餌は植物の新芽を好んで食べますが、枯葉や動物の死体といったものも食べます。最近はタンパク質を摂取しないと生きていけないことが判明しており、死んだナメクジなどもよく食べているようです。
 寿命は約1年で産卵期は適温の春と秋といわれていますが、専門家の方が季節ごとの生殖器の発達具合を調べた結果、秋の方が発達していた為、産卵量も秋の方が多いと推測されています。



ナメクジ対策・予防


 近所に住宅があり、庭にも物置小屋やコンリートブロック等があるなどナメクジが隠れやすい環境となっている事の多い家庭菜園の現場ではナメクジを完全に駆除することは不可能ですので、対策としては個体密度を下げることが大きなポイントとなってきます。
 具体的には農作業が終わった冬に行う「石灰消毒」や「天地返し」の作業は地中で冬を越しているナメクジの卵を石灰や寒風により死滅させる効果や地中深くに埋め殺しにしてしまう効果があります。
 またナメクジが卵からふ化し活動を開始するのは平均気温が10度前後となり遅霜の心配が無くなった頃。具体的には桜が見頃をむかえる頃ですので、その時期を見計らって市販のナメクジ駆除剤を蒔いておくと効果的に作用し個体密度を下げる事ができます。理由としてはまだ餌が少ない時期なのでナメクジ駆除剤に含まれる誘引剤に誘われナメクジが食しやすい事と卵からふ化したばかりで個体のサイズが小さいので駆除剤の効果が効きやすい事などがあげられます。
 この他一般的に言われているナメクジ対策・予防方法について以下にご説明していきます。


ポット栽培

ナメクジ 食害  ナメクジは新芽、特に発芽したばかりの双葉(子葉)は大好物です。仮に双葉(子葉)が食害を受け小さいながらも穴など空いてしまった場合はその後の成長が阻害されたり、食害を受けた部分から病原菌が入り込み枯死してしまう場合もあります。いずれにせよ双葉の状態というのは人に例えると赤ちゃんの状態ですので野菜にとって致命傷となってしまう事が多々あります。このような被害を避ける為には種を直まきせずポットで栽培するのが効果的です。ポットで栽培し、本葉が4〜5枚ほど出てきてから畑に植えます(野菜の種類によって植え替え時期は異なる場合があります)。本葉は固い為かナメクジによる食害はほとんど発生しませんし、ある程度成長していれば仮に食害が発生しても元気に育っていきます。


袋がけ

ナメクジの食害跡 晩夏、初秋の頃はナスやトマトといった野菜の収穫が最盛期を迎える頃ですが、同時にナメクジの活動も活発化する時期です。ウリ科やナス科の実はナメクジも大好物でよく食べられてしまいます。大きめで不規則ながらも円形の穴が実に空いていたらそれはほぼナメクジの仕業と思って間違いありません。
 この場合は袋がけが効果的です。物理的に遮断してしまうので食害はおこりませんし、ナメクジも実が食べれなかったから代わりに葉を食べるといった行動もとりません。ただし少しのすき間でも侵入してきますので袋の口はしっかりと閉めておかなくてはなりません。


銅線

 ナメクジは銅や鉄を嫌うので、畑や株の周りに銅線を敷けば侵入を防げ予防できるというお話をよく聞きます。専門家の研究ではナメクジやカタツムリが銅を嫌うのはほぼ間違いのない事実のようですが、市販されているφ2mm程度の銅線では全くといってよいほど効果はなく、幅20mmほどの銅板をもってやっと効果が確認されており、費用や入手の困難さの視点からすると非現実的です。


コーヒー・酢

 コーヒーや酢にはナメクジに対して忌避効果があるとされています。これは半分正解で半分間違いです。正確には駆除効果はありコーヒーや酢をナメクジにかけると死んでしまいます。これはサポニンやカフェインの効果によるものですが、予防対策として野菜の根元や葉に吹き付けても直ぐに乾燥・分解してしまいますので忌避効果は限定的といわれています。



ナメクジの駆除


 ナメクジの駆除剤としてよく知られているのが「ナメトール」。天然由来成分で人や自然にも安全な優れものです。この他にもビールや酢、コーヒーといった一般家庭でも容易に入手可能なものでもナメクジ駆除は可能です。ナメトールについては別途「農薬」のページで詳細をご紹介していますので、本項では一般家庭にある素材でナメクジ駆除剤として使用可能なものについてご紹介していきます。
 ただし最初に申し上げておきますが費用対効果の観点からするとナメトールの方が酢、ビール、コーヒー等と比べ1/3〜1/4ほど安くなっています。駆除能力もナメトールの方が強力ですし、天然由来成分で安全ということも加味するとやはり基本はナメトールで酢やビール、コーヒーは補助的に使用するのがベストなのではないかと思います。



ビール

 ビールにはナメクジを引き寄せ、一部の個体を溺死させる効果があり、専門家の実験では誘因効果は市販の誘引剤よりも若干優れていたという結果も示されています。ただし誘引した個体全てが溺死するわけではないので、効果が確認できない場合はナメクジ駆除専用の薬剤を混ぜると確実に中毒死させることができます。薬剤を使用する際には野菜の栽培にどような影響が出るか事前に確認しておく必要があります。



酢・コーヒー

 前述してあるとおり酢やコーヒーにはナメクジに対する駆除効果が期待できます。ただし誘引効果はないので、ナメクジを見つけたら直接散布するといった物理的手法となります。酢に関しては殺菌効果もあるので野菜の病気予防・治癒効果も期待できます。



殺虫剤が効かない

 ナメクジの駆除については市販の殺虫剤を吹きかけてもなかなか死なないと言う方もおられます。実際個体によっては殺虫成分が付着した粘膜をまるで脱皮するかのように脱ぎ捨てていく事もあります。ナメクジ自体は非常に弱い生物なので時間の長短はありますが殺虫剤を吹きかけられれば十中八九死に絶えるのですが、安心できないという場合はカセットコンロ用のボンベに接続して使用できる「トーチバーナー」で焼いてしまうと確実です。トーチバーナーは他の害虫の駆除や病気に犯された葉茎の処分などにも使用できますので手元においておくと何かと便利です。