アブラムシ



アブラムシ アブラムシは果樹や一般野菜から草花とありとあらゆる草木で発生する吸汁性の害虫です。繁殖力が旺盛であっという間に群生してしまう他、ウィルスを媒介したりと農家や家庭菜園を楽しんでいる方にとってはまさに悩みの種となる害虫です。
 アブラムシは新芽や果実を好んで吸汁する為、新芽が縮んで萎れてしまい成長が止まってしまったり、果実が奇形してしまったりする被害が発生します。またすす病が発生する主な原因はアブラムシによる媒介と推測されています。
 本ページではアブラムシの生態をご説明したうえで、一般的な駆除・防除方法を紹介し、最後に家庭にある素材の活用を含めたアブラムシに有効な有効な農薬・殺虫剤をご紹介していきたいと思います。


アブラムシの生態・どこから来るのか?


 アブラムシの仲間は日本に800種類ほど存在しており、一般的にはこれらを総括してアブラムシとよんでいます。アブラムシは宿主植物でコロニーを形成し動かず吸汁していますが、個体数が多くなると翅を持った個体が生まれ新しい宿主を求めて風にのるようにフワリフワリと飛翔します。
 そして自分の気に入った宿主を見つけると、そこをすみかとし単為生殖(雌が単独で子孫を増やす)によって子孫を増やしていくのです。この時は自分と同じ遺伝子の雌の個体を卵胎生(自分の体内で卵をふ化させ子供を産む)で生んでいきます。
 単為生殖の為に雌しか生みませんが、冬が近づいてくると雄が生まれ、卵生有性生殖を行い卵を産み卵の状態で越冬し、春先に孵化し生命をつないでいきます。
 つまり普段は自分のクローンを増やして行き、越冬の為に卵を産むときだけ交尾をし自分と異なる遺伝子を掛け合わせるわけです。またコロニーを形成するなど社会性をもっている為、アリやハチなどと同じ社会性昆虫とされています。
 
 ほとんどの野菜が害を受けますが、アブラムシ自体も種類が800種類ほど存在し好んで吸汁する植物も各々異なってます。したがって畑によって発生するアブラムシの種類が異なる傾向があります。
 例えばシソとネギをAさん、Bさんの畑で同じように植えていても、片方ではシソにのみアブラムシが発生し、もう片方の畑ではネギにのみアブラムシが発生するという事象もよくみられます。



アブラムシの害

アブラムシ 害  アブラムシの怖い点は単為生殖で爆発的に増えて行く点と新たに宿主を探す際にウィルスを媒介する点にあります。
 アブラムシは雌が単独で毎日数匹から十数匹の雌の子供を産み、その子供も10日前後もすると子供を産み始めます。アブラムシの寿命は約40日ほどとされていますから約1ヶ月間子供を産み続けていくわけで、新天地を求めて新たな宿主にたどり着いた1匹のアブラムシが寿命を全うする頃には理論上2万匹ほど子孫を増やしている事になります。もっとも天敵に食べられたり強風や雨で宿主から離され死んだりしますから、そのまま鵜呑みにできる数字ではありませんが、旺盛な繁殖力は菜園家にとっては驚異です。アブラムシは数匹では目立った害はありません。しかし油断して数日目を離した隙に大量発生してしまい、成長阻害を起こしたり排泄物や死骸が原因による病気やカビといった害が発生してしまったというのはよく聞くお話です。数万匹のアブラムシも一匹から。アブラムシを見つけたら直ちに駆除することは家庭菜園における鉄則です。

 またアブラムシは新天地を探す際にまずその宿主候補の液を吸い、自分好みであるかどうか確認します。そして好みでない場合は再び新たな宿主を求め飛び立ちます。こうして理想の宿主にたどり着くまで何度も植物の汁を吸っていくわけですが、仮にこのアブラムシがウイルスを持っていた場合、汁を吸われた植物すべてにウイルスを分け与えて行く事になります。これがアブラムシの恐ろしいところで、ウィルス性の病気は薬剤で治すことができず処分するしかない場合もあるので、一匹の小さなアブラムシの為に多くの野菜の株を処分しなければならなくなる事態もあるのです。



アブラムシの発生時期

 ブラムシが発生する時期は春と秋。新芽が勢い良く伸びていく時期とそろそろ秋の野菜が実り始めたなぁ〜という時期に最も多く発生します。暑さには弱いので真夏の猛暑の盛りにはいったん姿を見せなくなります。また種類にもよりますが春と秋とでは春の方が大量発生しやすいとされています。



アブラムシの天敵

アブラムシの天敵  アブラムシの天敵としてよく知られているのがテントウムシとヒラタアブの幼虫。特にテントウムシはその愛らしい姿からは想像もつかないほどの大食漢で効果は絶大ですが、テントウムシも意思を持った生き物ですから、すぐにどこかに飛んでいってしまいますし、アブラムシが誘引するアリによって追い払われる事もあります。また同じテントウムシの仲間でも「ニジュウヤホシテントウ」は植物の葉を食べる害虫ですので見つけたら駆除が必要です。
 ヒラタアブの幼虫はその姿から害虫と間違えられたり、希に発生する外敵に対する攻撃性をもったアブラムシに体液を吸われてしまうこともあります。
 アブラムシに限らず天敵の利用は害虫の大量発生を防ぐなど一定の効果は認められていますが、農薬のような完全な駆除は期待できないので、過度な期待は禁物です。


アブラムシの防除・駆除


 最も身近な害虫の1つであるアブラムシ。そのためか防除方法もいくつか確立されており、なかにはプロの農家の方も実践されている信頼できる方法もあるので以下にご紹介していきます。


銀色のフィルム

 アブラムシは光の反射を嫌うことが知られています。この性質を利用して苗の時期から銀色のポリフイルムを畝に敷いておくことで、光を反射させアブラムシの飛来を防ぐ効果が期待できます。



黄色

 アブラムシをはじめとした多くの虫が「黄色」に引き寄せられる性質を利用したもので、水を張った黄色いバケツや風呂桶等を置いておくと黄色に引き寄せられ有翅アブラムシが水に飛び込み溺死するというもの。これは「黄色水盤」とも呼ばれ農業の分野では害虫予察のデータ集めの際に利用されています。
 なおただ水を張っただけでは逃げられることもあるので中性洗剤を少量混ぜておくと水面から逃げられなくなり効果が増します。 



高温駆除

 アブラムシは低温には意外と強いのですが、50度以上の高温には耐えられずあっという間に死んでしまいます。この高温に弱いという性質を利用した駆除方法で、植木鉢やプランターに植えた植物にしか適用できませんが、市販の園芸用の小型ビニールハウスにアブラムシが発生した植物を鉢ごと入れ、密閉します。すると20分ほどでビニールハウス内の温度が50度前後になるので、その時点ですぐにビニールハウスを開放し温度を下げます。これで植物に付着していたアブラムシはほぼすべて駆除できます。この方法は日差しが強く気温も高い6〜8月の快晴時に実施可能で、殺虫剤散布より効果があるといわれています。またアブラムシのみならずコナジラミやダニといった小型の昆虫類に適用できます。
 注意する点としては長い時間高温にさらされると植物のほうも痛んでしまうので換気のタイミングには注意すること。また市販のビニールハウスはサイズが小さいのでうっかりビニールに葉などが接触していると熱が直接葉に伝わり枯れてしまいます。


殺虫剤・農薬


 本項ではアブラムシに効果のある農薬・殺虫剤についてご紹介していきます。
 なおご紹介している農薬は緑線のものが一般的な化成農薬水色線のものが天然成分由来の安全な農薬で有機農業にも使用可能なもの、もしくは一般家庭でも使用されている素材となっています。


オルトラン

オルトラン 代表的な農薬のひとつ。用途別に粒状、乳液タイプがありコガネムシ、ネキリムシ、ヨトウムシ、アブラムシと幅広い害虫駆除が可能です。特に粒状タイプのものは根から殺虫成分が吸い上げられ、それをアブラムシが吸汁する仕組みなので効果的です。


マラソン乳剤

マラソン乳剤 野菜から家庭園芸の草花まで広く使用されている殺虫剤。オルトランに比べると効果のある害虫の範囲が若干少なめですが、それでも効果・信頼性は抜群です。主成分はマラソン。


スミチオン乳剤

スミチオン乳剤 オルトラン同様ほぼ全ての病害虫駆除が期待できる殺虫剤。家庭園芸における代表的な殺虫剤ですが、アブラナ科の植物への使用は不可となっています。主成分はMEP。

アーリーセーフ

アーリーセーフ  ヤシの実由来の安全な殺虫殺菌剤。主成分は脂肪酸グリセリドで病害虫に吹き付けると油脂成分による皮膜に覆われ窒息死させます。アブラムシやハダニといった小さい個体やうどんこ病にも効果がありますが、わずかでも皮膜を逃れた個体が存在すると再び増加することがありますので数日間隔による連続散布が望ましい使用方法です。

牛乳

 昔からよく知られているアブラムシ駆除方法。牛乳は乾燥蒸発する際に形成される皮膜の働きで、植物に付着している小さい個体を窒息死させる効果が期待できます。使用する際は薄めずにそのまま使用しますが、乾燥後は水で洗い流さないと嫌な臭いが発生したり小バエが集まってきたりします。よく晴れて乾燥している日(牛乳が乾きやすい日)に使用するのが効果的です。
 なお現実的なお話としてコストや効果を考慮すると、同じく天然由来の駆除剤である前述のアーリーセーフの方がはるかに優れています。