ネキリムシとは
ネキリムシとは昼間は地中に潜み、夜になると地表へ現れ、地際の茎を食害する害虫です。姿形や地中に潜んでいる点などは
ヨトウムシと同じですが、ネキリムシの場合はまだ幼い苗の状態の時に根元部分を切断されてしまうので、野菜にとっては致命傷となる場合もあり、なかなか厄介な害虫です。
白菜や大根といったアブラナ科の野菜のほか、ネギや玉ねぎの幼苗などで被害がよく発生します。
ネキリムシの生態
ネキリムシはヤガ(夜蛾)の幼虫の総称で、一見すると根を切られたように見えるためネキリムシ(根切虫)と呼ばれています。幼虫の状態で土の中で越冬し、暖かくなると活動を開始し春と秋に年3〜4回発生することもあります。卵は一個ずつ葉に産み付けられ、ふ化直後は葉を食べながら葉の上で生活しています。ただヨトウムシと異なり単独で行動する為、この頃の被害は軽微で目立ちません。問題になるのは大きくなってからで、大きくなると昼間は土中に隠れ、夜間に茎を食害し倒伏の被害をもたらすようになります。なお大きくなると行動力も大きくなり、植えたばかりの幼苗へ移動し被害をもたらしたりします。
ネギや玉ねぎなど苗を植えたばかりなのに倒伏の被害が発生するのは、ネギや玉ねぎに卵が産み付けられ孵化・成長したのではなく、どこか近くの雑草から大きく成長したヨトウムシが餌を求めて移動してきたものと推測されます。
ネキリムシの駆除・対策
幼苗時に根元から倒伏しているのを見つけたらまずネキリムシを疑いましょう。幼苗の状態なので雨風にあたり倒伏してしまったと勘違いし被害が拡大してしまうことはよく聞くお話です。雨風が原因と思う前にまず株の周りを割り箸などでほじくり返して見て下さい。2pほどの芋虫が姿を現したらそいつが犯人。つまりネキリムシです。ネキリムシが潜んでいるのは倒伏の被害があった株の直ぐ近くですが、土と同じような色をしている為、以外と見つけにくく1回調べてネキリムシが出てこなかったからといって安心せず、疑って何度も調べてみて下さい。
また卵から孵化したばかりの幼虫は葉の上で生活していますが被害はほとんど分かりません。つまり食害は軽微でありますから、予防的に農薬を散布しておき地中に潜るようになる前の段階で駆除してしまうのも有効な対策です。
最近の調査ではネキリムシは雑草もよく食べ、また移動能力も高いことが分かってきました。つまり雑草が生い茂っている場所があると、そこで産卵・孵化しやがて大きくなり野菜畑に移動し被害をもたらす事もあるので、畑の周りに雑草を茂らせないこともネキリムシ対策には大切な要素となってきます。
殺虫剤・農薬
本項ではネキリムシに効果のある農薬・殺虫剤についてご紹介していきます。
なおご紹介している農薬は
緑線のものが一般的な化成農薬。
水色線のものが天然成分由来の安全な農薬で有機農業にも使用可能なもの、もしくは一般家庭でも使用されている素材となっています。
オルトラン
代表的な農薬のひとつ。用途別に粒状、乳液タイプがありネキリムシ以外にもコガネムシ、ヨトウムシ、アブラムシと幅広い害虫駆除が可能です。
STゼンターリ顆粒水和剤
微生物が生成した芽胞が主成分の殺虫剤。チョウ目の幼虫が食すと病原性のある結晶性タンパク質が産生され殺虫効果を発揮します。チョウや蛾の幼虫以外の害虫駆除効果は無く、効果を発揮するには水和剤が付着した茎葉を幼虫が食べる必要があります。筆者が実際に試してみたところ長さ1.5p程度の芋虫の場合、葉を食べてから3時間ほどで動かなくなりました。小さい個体に対しては強力な効果がありますが大きくなってしまった個体には効きにくく、早期の使用が推奨されます。また収穫を控え化成農薬が使用出来ないときなどにもよく使用されています。