水仙(スイセン)
スイセンはヒガンバナ科の植物で日本でもっとも親しまれている園芸植物のひとつです。日本水仙を含め原産地は地中海沿岸とされていますが、その特徴的な花の形から世界中で栽培され現在では沢山の品種が存在しています。しかしその育て方に関してはほぼ同じなので、本サイトでは数あるスイセンの種類をひとまとめにして「スイセン」と称し栽培方法をご紹介していきます。
なおスイセンは前述してあるとおり種類が沢山ある為、誕生花及び花言葉も複数存在しており、その代表的なものを整理すると以下のとおりとなっています。
水仙の花言葉・誕生花 一覧
スイセンの花言葉で一番有名なのが「報われぬ恋」。これはギリシャ神話に登場しナルシストの語源ともなった美少年ナルキッソスの物語に由来しています。絶世の美男子でありながら神々の怒りにふれ、報われぬ恋に翻弄されながら亡くなったナルキッソスの物語は
他サイトで紹介されていますので、詳細はそちらをご参照下さい。
スイセンの育て方 注意点・コツ
スイセンは10度以下の低温にあたり発根し開花に備え根を張りますので、球根は冬が来る前に植えます。
暑さ寒さに強く、病害虫にも強いので植えっぱなしでもよく育ちます。
球根は3〜5球ほどまとめて1個所に植えて群生させた方が開花時の見応えは良いです。
水仙(スイセン)の時期・季節
※上記栽培カレンダーはあくまで関東地方における標準的な品種を栽培した場合のものです。スイセンは耐暑性、耐寒性が強く、栽培場所、品種によっては時期や季節が大きくずれ込む場合がありますことご留意下さい
スイセンの球根の植え付け時期は10月前後。冬を越し桜の花が見頃を迎えた頃、チューリップよりも一足早く花を咲かせてくれます。花が枯れても葉はしばらく茂っていますが、夏が本番を迎える前にやがて葉も枯れ、来年の春になると再び花を咲かせるのです。
花後・花が終わったら
スイセンは球根で増える植物ですが、花が終わった後は丸い種子果もつけます。この種子果は放っておいても問題はないのですが、栄養分を種子果に取られてしまいますし、見栄えも悪いので花が枯れてた時点で摘み取ってしまうのが一般的です。
球根の堀上げ・保管
スイセンは3年ほど植えっぱなしにしても問題ありませんが、やがて株が密集し花を咲かせない株も多くなってきます。こうなってくると植え替えのタイミングで、葉が3分の2以上枯れた頃に球根を堀上げ選別します。植え替えが必要となる状態になった場合、地中に埋まっている球根の数も手に負えないほどの多さとなっているはずですので、陰干し選別したうえで保管します。
来年も花を咲かせてくれる良い球根とは変形や変色、傷が無く、形は丸みを帯びた電球状のもの。ここまで選別してもまだ球根が余るようでしたら、重さを計り重たいものから残していけば間違いありません。もっとも植える場所に余裕のあるようでしたら、小さい球根を大切に育て上げて花を咲かせてみるのも面白いです。花を咲かせるまでに2〜3年かかると思いますが愛着がわいてきますよ。
球根は雨の当たらない場所で陰干し乾燥し、秋の植え付けまで保管しておきます。
植え替え
スイセンの植え替え時期は秋。ただしニホンズイセンの場合は年内には咲くので、夏が終わり暑さも和らいでくる9月下旬〜10月上旬に植えつけます。植えつけの間隔は大きな球根の場合は約20cm(鉢植えの場合は10p前後)、中〜小球根の場合は約10〜15cm(鉢植えの場合は5p前後)が理想ですが、前述してある通りスイセンは球根を3〜5球ほどまとめて1個所に植えて群生させた方が開花時の見応えは良いので、球根を植える間隔は皆さんの好みや庭の広さと相談して決めて下さい。なお植えつけ深さは地植えの場合6〜10cm、鉢植えの場合は5cm前後とします。
なおスイセンの球根を花が咲く春に植えてしまう方がたまにおられますが、この場合筆者の経験上申し上げれば、芽が出る確率は50%ほどで、さらに花を咲かせてくれる確率は10%以下。また夏になっても葉は枯れますが、根は元気に伸び続け休眠状態にならない場合が多くみられます。
ただ翌年の春まで耐え抜いた球根は花を咲かせてくれる事もあるので、時期を間違えて植えてしまっても来年の春までは諦めずに様子を観察するようにして下さい。
肥料
実際のお話としてスイセンは地植えの場合日当たりさえよければ放っておいても良く育ちます。もし植える土地が痩せており前年度に花を咲かせなかった、もしくは植える球根が小さい場合などは土に堆肥及び暖効性の肥料を混ぜておきます。追肥は芽を出したら月2回のペースで行いますが、この時窒素成分は少なめとし肥料自体の量も少なめにするのがポイントです。
植える場所の水はけが悪い場合は軽石やパーライトを加え土壌改良を行い、周辺地盤よりも若干高くなるように調整します。
花が咲かない
スイセンを育てるにあたり最も困った現象が「花が咲かなかない」というもの。花が咲かない場合、「去年植えた球根が咲かない」場合と「今まで花を咲かせていたのに花が咲かなくなった」場合とでは原因が異なってきますので、本項では前述の2項目に分けて花が咲かない原因を考えていきたいと思います。
去年植えた球根が花を咲かせない
一般的に市販されている球根は厳しい品質検査を受けた上で店頭に並んでおり、球根側に原因があることは少々考えにくく栽培環境に原因がある場合が多いです。その一方で自ら育て堀上げた球根を植えた場合は球根側に問題がある場合が多いので、その見極めが大切です。
1.球根を植える時期が遅すぎた
スイセンの球根は真夏は休眠状態となりますが、気温が下がると発根し根を伸ばし来年の開花に備えます。前述の「植え替え」の項でも説明していますが、仮に球根を秋ではなく春に植えた場合は根を張る期間が無いので花を咲かせる確率は極端に低下します。
2.肥料及び水分の与えすぎ
スイセンが花を咲かせる為には十分な水分が必要ですが、かといって与えすぎると根腐れをおこしたり球根が腐ってしまったりしてしまいます。また肥料も与えすぎると葉が生い茂り逆に花を咲かせない場合があります。
3.球根が花を咲かせるまで生長していない
球根というのはどんなに小さくても植えてしまえば花を咲かせるというものではありません。全てとはいいませんが、ほとんどの球根は分球後数年かけて栄養を蓄え肥大しやっと花を咲かせるのです。ですから球根が小さい場合は花を咲かせる事ができません。理想の球根の大きさは種類により異なるので一概にはいえませんが、一般的なものでは重さ30g以上できれいな電球状の形をしていれば、高確率で花を咲かせてくれます。
4.球根が病害虫に犯されている
市販の球根は厳しい品質検査を経て消毒もされますから病害虫の心配はほとんどありませんが、自分で堀上げた球根は病害虫に犯されている場合があります。この場合、当然の事ながら花を咲かせるどころか目を出すこともできません。対策としては堀上げ後
球根を消毒したり、保存中は湿気に注意し十分にに乾燥させる等がありますが、変形や変色した球根、また大きさの割に極端に軽い球根なども病害虫に侵されている可能性が高いので注意が必要です。
去年まで花を咲かせていたのに急に花が咲かなくなった
今まできれいな花を咲かせてくれていたのに、何故か今年は花が咲かなかった。これは大きく分けて地中で球根が増えすぎる等して成長が阻害され花を咲かせなくなる場合と病害虫による場合が考えられます。
1.地中で球根が増えすぎている
スイセンは2〜3年植えっぱなしにしても問題なく育ってくれますが、長年放っておくと分球した球根が増えすぎて地中で互いに根を張るスペースや球根の育つスペースが無くなり成長が阻害され、やがて花を咲かせなくなります。この場合はある年を境に一気に花を咲かせなくなるようなことは少なく、年々花の数が少なくまた小さくなり葉だけが茂るようになります。対策としてはスイセンが密集してきたら球根を堀上げ、理想の間隔で植え直します。
2.花が咲き終わった時点で葉も切っている
ごく希に球根植物の花が咲き終わった時点で葉も切断してしまう方をお見受けしますが、これはやってはいけないことで、スイセンは花が枯れた後も葉はしばらく残り来年の為に栄養を球根に蓄えます。葉を枯れる前に切ってしまうと、来年花を咲かせる為の栄養を蓄えることができませんから、来年花を咲かせる確率は極端に低下してしまいます。もし花が枯れ葉だけのスイセンの見栄えが悪いと思ったら、葉を束ねて結んで見て下さい。筆者自身学者ではないので断言はできませんが、スイセンは結んだ状態でも光合成は行われるそうです。昔から日本に伝わる伝統的な管理方法です。
3.病害虫に犯されている
スイセンは比較的病害虫に強い植物ですが、日当たりや水はけが悪かったりすると病害虫が発生します。特にウィルス性の病気は「ウィルス病」と呼ばれ治す薬は無く次世代へも伝染しますので、病気が確認されたら早めにその株を処分し、可能であれば植えていた周辺の土も消毒しておきましょう。
スイセンのプランター及び鉢植え
スイセンをプランターや植木鉢で育てる場合、水はけがよく、根を張りやすい柔らかい土を好みますので腐葉土、ピートモスなどを約30%ほど混ぜて下さい。
日光を当てることにより早く大きな花を咲かせますので、開花までは日当たりの良い場所に置き、開花後は午前中に日光が当たるような半日陰に移動させると花が長持ちし、球根も大きくなりやすいです。
また鉢サイズは標準の15〜18cm鉢で大丈夫ですが、スイセンは群生させた方が見応えがあるので少々大きめの鉢に5球ほど植えると見事な光景を楽しめます。
水やりは土の表面が乾いた時点でたっぷりと与えます。
スイセンとニラ(毒性について)
スイセンをはじめとしたヒガンバナ科の植物には鱗茎を中心に毒が含まれており、葉の形の似たニラと間違って食し食中毒を起こす事例が後をたちません。よく「スイセンとニラを間違えるなんて信じられない」といった会話を耳にしますが、実際にスイセンとニラが同じ場所で生えていた場合見分けるのは難しく、万が一なんらかの原因で知らず知らずのうちに混在してしまった場合、筆者自身はほぼ間違いなく誤食してしまうだろうと思っています。
スイセンの誤食による食中毒を防ぐには、同じ敷地内にニラを植えないのが一番なのですが、他にも防ぐ方法や見分け方がありますので以下にご紹介していきます。
1.同じ敷地内にスイセンとニラを植えている場合は、互いに植えているエリアをはっきり区分し距離を持たせる。
2.一般的な品種のスイセンは初夏から翌年の春まで芽を出さないので、ニラを収穫するのは夏から秋にかけてとする。ただしスイセンと同じく毒を持つヒガンバナ科の植物のなかには夏から秋に芽を出す品種もあるので注意して下さい。
3.スイセンは葉からの臭いがないが、ニラの葉は独特の強い臭いがあります。
4.地中から引き抜いてみるとスイセンには鱗茎があり、ニラにはありません。ただし過去にニラと同じネギ属で鱗茎のあるアサツキとスイセンを間違えて誤食してしまった事例が報告されています。